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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)2152号 判決 1952年3月28日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人神谷健夫、同岸達也の上告趣意第一点について

検察官が第一審判決書事実摘示の通り公訴事実を陳述した以上、裁判長が更に所論のように第一審判決を読聞ける必要はないから、本件において公訴事実開示の手続は適式に履践されているというべきである。従て所論判決は本件に適切でないばかりでなく、原判決には判例違反の点は認められない。

同第二点について

論旨は刑訴四〇五条にあたらない。記録を精査しても裁判長の証拠調が被告人の防御権を実質的に制限したとは解せられないから(裁判長はその都度被告人に対し意見の有無を尋ねているし又最後に弁護人からも「他に立証等ない」と答えている。)刑訴四一一条を適用すべき場合とも認められない。

同第三点について

旧刑訴法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則(昭和二五年最高裁判所規則三〇号)八条は裁判所は法令の適用を示すには、法令を掲げれば足りると規定しているから、原判決の擬律は右の趣旨に副うものである。所論判例は前記特例に関する規則の支配を受ける本件には適切でない。

よって刑訴施行法三条の二、刑訴法四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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